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「ナカバヤシ」の5文字を、どう耳に残すか。

~ニッポン放送CMグランプリ「選奨」受賞作、
そのCMソングができるまで~

このたび、弊社SYNCHROTRONが制作に携わったナカバヤシ様のラジオCMが、ニッポン放送CMグランプリの40秒未満部門で「選奨」に選出されました。

同部門のエントリーは215作品。その中から選ばれたのは、わずか4作品です。

ナカバヤシ様、広告代理店のSHINTSU様、制作チーム一同、たいへん喜んでおります。

215作品中、4作品。
これは素直に、かなりうれしい。

今回は受賞を記念して、CM楽曲の作曲・編曲・レコーディング・ミックス、さらに音楽ディレクションまで担当した谷垣洋平に、楽曲がどのように作られたのかを聞きました。

題して、

「『ナカバヤシ』と連呼するCMソングは、どうやって作るのか」

です。


歌詞から伝わってきた、強烈な意思

今回のCMで伝えたいことは、非常に明快でした。

ナカバヤシという会社名を覚えてもらうこと。

商品の機能を細かく説明するのでも、企業理念を壮大に語るのでもありません。

とにかく「ナカバヤシ」という名前を、耳に残す。

谷垣も歌詞を受け取ったとき、その意図を強く感じたといいます。

 歌詞を見たときに、「本当に、ただただ社名を伝えたいんだな」というインパクトがありました。
 だから、その歌詞の強さに負けない曲を付けようと思いました。

ラジオCMには映像がありません。

そのぶん、言葉と音だけで企業名を記憶させる必要があります。

今回の楽曲制作における中心課題は、歌詞の意味を解釈することではなく、「ナカバヤシ」という5文字を、いかに魅力的に聞かせるかでした。


CMソングは、どのように作られるのか

今回のインタビューで聞いた制作工程は、大きく分けると次の6段階です。

  1. ジャンルの方向性を決める
  2. メロディを作る
  3. 編曲する
  4. 音楽として必要な要素が入っているか判断する

一つずつ、詳しく見ていきます。


01 まず、ジャンルの方向性を決める

谷垣が最初に考えたのは、楽曲のジャンルです。

今回は、次の3つの方向性でラフを制作しました。

  • エレクトロポップ
  • ロック
  • 童謡

同じ「ナカバヤシ」という言葉でも、ロックにすれば力強くなり、童謡にすれば親しみやすくなります。

最終的に選ばれたのは、エレクトロポップでした。

理由はシンプルです。

 「ナカバヤシ」という言葉のインパクトを、いちばん出しやすいと思ったからです。

谷垣によれば、ジャンルは頭の中で理屈から組み立てるというより、歌詞を読んだ瞬間に、ある程度見えてくることが多いそうです。

歌詞を見たら、ジャンルが下りてくる。

感覚的に聞こえますが、掘り下げるとそこには経験に裏付けられた根拠がありました。


02 まず、自分で歌ってみる

ジャンルの方向性を決めたら、次はメロディを作ります。

谷垣の作曲方法は、まず歌ってみること。

楽器を弾くより先に、歌詞を声に出しながらメロディを探していきます。

  • 一度歌ってみる
  • 少し変えて、また歌う
  • さらに歌いやすい形にする
  • 言葉が自然に立ち上がるメロディを探す

この作業を繰り返しながら、メロディの精度を上げていきます。

今回、特に重要だったのは、やはり「ナカバヤシ」の5文字です。

どの音にアクセントを置くのか。
音を上げるのか、下げるのか。
どこで伸ばし、どこで切るのか。

たった5文字ですが、メロディの付け方によって、聞こえ方も記憶への残り方も変わります。

そして理想は、聴いた人が思わず一緒に歌ってしまうこと。

CMソングにとって「口ずさめる」は、非常に強い性能です。

メロディが固まった段階で、谷垣の中では「作曲」は完了します。

この時点では、まだ使用する楽器は決まっていません。


03 作曲と編曲は、別の仕事

一般的には「曲を作る」という一言でまとめられがちですが、作曲と編曲は別の工程です。

作曲で作るのは、主に歌のメロディ。

編曲では、そのメロディをどのような楽器で、どのようなリズムに乗せ、どのような世界観に仕上げるのかを決めます。

極端に言えば、同じメロディでも、ギターを入れればロックになり、ピアノとストリングスを入れればバラードになり、三味線を入れれば急に和風になります。

今回選ばれたエレクトロポップでは、シンセサイザーや電子的なドラムサウンドを中心に楽器を構成しました。

生楽器らしい温度感よりも、電子音の持つ明快さや軽快さを優先しています。

編曲で楽器を決めた瞬間に、曲のジャンルが急にはっきりします。メロディだけの段階では、まだ別のジャンルにも行けるんです。

ジャンルを決定づけるのは、楽器だけではありません。

リズムパターンやベースラインの有無でも、曲の印象は大きく変わります。

同じメロディでも、4つ打ちのリズムを入れればダンスミュージックに近づき、ギターのビートを入れればロックに近づく。

音楽制作においてリズムは、映像でいうところの編集テンポやカメラワークに近い存在なのかもしれません。


CM音楽では「記号としての音」が役に立つ

谷垣の話の中で印象的だったのが、楽器を「記号」として捉える考え方です。

たとえば三味線の音が聞こえれば、多くの人は瞬間的に「和風」を感じます。

コンガが鳴れば、南国的、ラテン的な空気を感じるかもしれません。

もちろん、実際の音楽ジャンルはもっと複雑です。

しかしCMでは、限られた時間の中で、聞き手に素早く世界観を理解してもらう必要があります。

そこで、特定のイメージを連想させる音を、アイコンのように配置する。

 CMでは、理解を助ける記号的な音を散りばめることがあります。一音で世界観を伝えられるので。

これは映像制作にも共通します。

ネオンがあれば都会の夜を感じ、白い壁と柔らかな光があれば清潔感を感じる。

制作物の中に、視聴者がすぐ意味を読み取れる記号を置く。

音楽と映像は、使っている感覚器官こそ違いますが、設計思想はよく似ています。


作業はPCの前だけじゃない

今回は、40秒以内のCM楽曲を3案制作しました。

パソコンの前で作業している時間だけが、制作時間ではありません。

 シャワーを浴びているときや、手を動かしていない時間も、頭の中ではずっと考えています。
 ゴールのイメージが見えていれば、実際の作業は速いです。

クリエイターには、身に覚えのある話ではないでしょうか。

制作ソフトを開く前に、すでに仕事は始まっています。

  • どんな印象にするのか
  • 何を一番伝えるのか
  • 完成したとき、受け手にどう感じてほしいのか

ゴールの解像度が高ければ、手を動かす時間は短くなる。

反対に、ゴールが見えないまま作業を始めると、ツールの中で迷い続けることになります。


頭の中にあったのは、ネオンの街で踊る映像

音だけで成立するラジオCMですが、谷垣の頭の中には、制作中から映像が浮かんでいたそうです。

ネオンに照らされたストリート。
その中で、アーティストが踊っている。
ポップで、少し無機質で、印象に残るミュージックビデオのような世界。

具体的な映像をイメージすることで、音色やテンポ、楽曲全体の質感を決めていきました。

音楽を作るときに映像を考え、映像を作るときに音を考える。

谷垣は、音楽制作と映像制作についてこう話します。

 工程や、やるべきことは、ほとんど同じだと思います。
 最終的なアウトプットが聴覚なのか、視覚なのかという違いだけです。

どちらも、最初にゴールを設定し、必要な要素を選び、組み合わせ、余分なものを削っていく仕事です。

複数のスタッフが同じゴールイメージを共有できれば、制作もスムーズになります。

「明るい感じで」「若者向けに」といった抽象的な言葉だけでなく、具体的な映像や音楽を参照しながらイメージを共有することは、領域をまたぐプロジェクトほど重要になります。


04 ディレクターは「必要なものが入っているか」を判断する

今回、谷垣は作曲家であると同時に、音楽ディレクターでもありました。

ディレクターの役割について尋ねると、答えは明快でした。

必要とされている要素が、ちゃんと入っているかを判断することです。

今回であれば、確認する条件は次のようなものです。

  • ナカバヤシという社名が際立っているか
  • 一度聴いただけで印象に残るか
  • 口ずさみたくなるか
  • 企業CMとして成立しているか

作曲家として「面白い音楽」を作るだけではなく、広告として必要な機能を果たしているかを見る。

作り手と判断者を一人で兼ねる難しさはありますが、ゴールが明確であれば、その二つの視点は両立できます。

今回の楽曲について、谷垣は「必要な要素は入れられた」と振り返ります。

その結果が、今回の選奨にもつながったのかもしれません。


自分で歌った曲は、なかなか子離れできない

制作した楽曲に対する距離感についても聞いてみました。

谷垣によれば、自分が歌っていない楽曲は、比較的早く手離れするそうです。

一方、自分で歌った楽曲は、少し事情が違います。

自分で歌ったものは、まだ子離れできていないことがあります。

作曲し、編曲し、自分の声まで入っている。

そこまで関わると、作品との心理的な距離は近くなります。

完成直後は気になる部分ばかりが耳に入っても、時間が経つと、少しずつ客観的に聴けるようになる。

制作物に対して、作り手から親のような視点へ変わっていく。

これも映像やデザインを作る人には、よく分かる感覚ではないでしょうか。


「ナカバヤシ」と伝える。その一点に、全部を使う

今回のCMソングは、一見すると非常にシンプルです。

社名を繰り返し、覚えてもらう。

しかし、そのシンプルな目的を達成するために、さまざまな判断が重ねられています。

  • どのジャンルを選ぶのか
  • どのようなメロディなら言葉が立つのか
  • どの楽器なら瞬時に世界観が伝わるのか
  • どのような歌い方なら明るさが届くのか
  • どこまで個性を出し、どこを抑えるのか

情報を増やすのではなく、一つの言葉を強くする。

短い広告だからこそ、何を伝え、何を捨てるのかが問われます。

今回の受賞は、作曲や歌唱だけでなく、企画、コピー、演出、代理店、広告主を含めたチーム全体で、「ナカバヤシ」という一点に向かえた結果だと思います。

改めまして、ナカバヤシ様、SHINTSU様、制作に関わった皆様、おめでとうございます。

そして、ありがとうございます。


SYNCHROTRONでは音楽制作にも対応しています

SYNCHROTRONでは、映像制作だけでなく、作曲、編曲、レコーディング、ミックス、音楽ディレクションを含めた音楽制作にも対応しています。

映像と音楽を別々に考えるのではなく、同じゴールイメージから一体的に設計する。

CM、プロモーション映像、ミュージックビデオなど、映像と音を横断した制作についても、ぜひご相談ください。

映像のみならず、音楽もいけるよSYNCHROTRON。

よろしくお願いいたします。